2007年04月28日

web小説 Season 〜Chapter01-春〜 フミツキマサヒト

久々の小説レビュー。どーも、ヘボラマンです。

さて、本日レビューする小説は相互リンクサイトAqua Rainbowのフミツキマサヒトさんの作品「Season 〜Chapter01-春〜」を紹介します。

――あらすじ――
岸部統也と涼倉春菜は幼なじみ。
 二人はクラスの仲間たちを交えつつ、面白おかしく日々を過ごしていた。
 いつまでも続いてほしいと願ったこの心地よい関係は、しかし時とともにゆっくりと変わっていくのだった……。

さて、「Aqua Rainbow」の主力作品であり、全四部作の「season」シリーズの第一部「Season 〜Chapter01-春〜」。実はこの私、第一部第一話が連載されていたときからずっと読ませてもらっているファンの一人だったりします。ええ。こうして、マサヒトさんから書評依頼が来たときには、嬉しさのあまり小一時間小躍りしてました。
まぁ、うだうだな前置きはいいとして、今回紹介する「Season 〜Chapter01-春〜」は全五話構成の中編の作品です。ジャンルとしては学園もの+幼馴染み。といった具合でしょうか。幼馴染み同士である岸部統也と涼倉春菜がお互いの気持ちに気づき、恋人同士に変わっていくというストーリーです。
では、これから細かいところを見ていきましょう。

この作品を読んでいて、一番に感じたことはものすごく構成に凝っているなぁ、ということでした。
基本的に、中編くらいの作品となると、先の展望をしっかりもち、さらに回収しやすく興味を持たせられる伏線を張ることが大切になります。
本作品は起承転結がきっちりと構築されており、登場するキャラクターの数も無理がなく、かつ個々人がいい具合の性格、特性を持っていたと思います。
特に、主人公岸辺統也たち仲良し四人組のメンバーが実に濃い。統也と春菜のそれぞれの親友、杉沢健二、藤河りのは大変いいキャラだと思います。少しばかり、主役である幼馴染み二人のキャラが薄いなぁと感じていたのですが、その分この二人はかなりキてました。何度、この二人が絡む掛け合いに噴き出したことか。


「お前のせいで俺まで補習だぞ!? どうしてくれる!?」
 ツバが飛びそうなくらいの口調でまくし立てるが、統也は既に諦めきった顔で答える。
「お前だって居眠りしてたんだから当然だろ?」
 至極真面目な意見だが、健二は納得しない。
「いや! 俺は悪くない! お前だ! お前が全ての元凶だ! というわけでお前で決定だ!」
「何とでも言えばいいけどさ、もう俺らの死期は決まっちまったんだぜ? 一緒に黄泉路逝こう」
「いやだぁ! 俺はまだ逝きたくねぇ! 俺は逃げるぞ!」
「でも逃げたら、間違いなく処刑でありますよ?」
 りのの返答に健二は思わず絶句する。もちろん彼女が言った『処刑』とはあくまで冗談だが、あの森高女史ならやりかねないと、この場にいる四人は思った。
「あ〜ぁ。ついてねぇな」
 ついに健二も観念し、カツカレーに手をつける。
「二人とも……。災難だね」
 春菜は心配そうに二人を見やる。
「まぁ……。こんな日もあるさ」
「これが最後の晩餐になるかもな……」
「杉沢君、どうせ言うなら最後の昼餐じゃない?」
 春菜が訂正するが、既に死期を悟った二人の耳には届かない。
「ハルちゃん……。せめて二人が無事天に召されるようにお祈りするであります」
「いや……。本当に死ぬわけじゃないんだからそれは……」
「岸部君、杉沢君! りのたんは今日というこの日に二人に会えたことを、決して忘れないであります!」
『藤河!』
 りのの言葉に感極まった二人は、りのの手を取る。
(ど……どうしよう……?)
 春菜だけはどうしていいかわからず、泣きながら手を取り合う三人を呆然と見ていた。


また、全体的に台詞主体の作品だったのですが、その台詞のやりとりに違和感がなく、テンポが良かったので、全体のバランスが損なわれず、コミカルで愉快な作品に仕上がっていました。まぁ、そうでなければ私がファンになるわけないのですが^^;
凝っていたり、難しい表現などはありませんが、その分愉快な掛け合いに、ふっと肩の力を抜いて読むことが出来ます。流石、ラノベ風小説と謳っているだけあって、気軽に読めるまさに"ライト"な作品になっていました。
伏線も実際にそんなあからさまなものはなかったのですが、読み終わったあとに「えっと、これ、結局何だったの?」と思わせるようなものもなく、読者に謎を残したり、引っかかりを残したりすることはなかったと思います。最後の場面も、きれいにまとめられていて良かったかと。


ここで、少しだけ気になった点を。
起承転結をしっかりと踏襲し、整った構成であったのですが、少しばかり後半部分、特に第四話、第五話に焦りが見られました。実際に連載中、四話五話を執筆してる際、ものすごく完結を焦っているようなコメントもありましたので、きっとそれが影響していると思うのですが、とりあえず、四/五話の部分がだいぶ勇み足になっており、読者に少し置いてけぼりをくらわせるような形になっているような気がしました。導入部分が大変良かったので、後半の焦りは結構残念なものでした。もし、この作品が全五話ではなく、全八話ほどであったなら、全体的にバランスよい作品であったかもしれませんね。

魔法も、戦闘も、さらには超常現象もなーんにも出てこない普通の学園ストーリー。だからこそ、意外と楽しく読める。何となく、親近感を持つことが出来る。
作者の目指す「ライトノベル風味の小説」というものはしっかりと実現されていると思います。
私としては、とても楽しんで、力を抜いて読める作品でした。
現実味のあるライトノベル。いいじゃないですか。とっても。
読み終わったあと、温かな気持ちに満たされる。こう、締めくくって、今回の書評は終わりたいと思います。

掲載サイト Aqua Rainbow
掲載ページ Season 〜Chapter01-春〜
作者    フミツキマサヒト


posted by ヘボラマン at 15:39| Comment(27) | TrackBack(5) | 小説レビュー 角川文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月02日

web小説 無題 ジョー

どーも、皆さんお久しぶりです。前回の書評からは激しく間が開いておりますが、今回、書評依頼が舞い込んできましたので、気合いを入れて一発やりたいと思います。

今回、書評する作品はジョー様のオリジナル作品です。

――あらすじ――
主人公の相沢祐一この間大学に受かったばかりの一八歳。彼には三つ年上の藤木綾という幼馴染みがいた。
あれこれしてくれる彼女に、有り難く思いつつも、気恥ずかしく思う祐一。大学進学をきっかけに、念願の一人暮らしを手に入れたはずだったが……。一つ屋根の下の、ドタバタラブコメディ


現在はまだプロローグと第一話(四部構成)しか掲載されておりません。作品としては、筆者の処女作というそうです。
では、これから書評に入りたいと思いますが、基本的に辛口でいくのであしからず。処女作と言うことですが、容赦無しでお願いします^^;

さて、本作を一通り読ませてもらって思ったこと。もちろん良い点、悪い点両方があった。しかし、どうしても処女作というわけで、悪い点が遙かに多く、またよい点も指摘して褒め称えることが出来るほどではないものであった。
あまりに厳しめに言って、著者の今後の創作意欲を削ぐことになってしまってはいけないのだが、今後も読者を「楽しませる」作品を書いていって欲しいと思うので、しっかりと問題点を指摘していきたい。

まず、基本的な知識に関して。今作品はだいぶ基本的事項に欠落が見られた。段落の頭が一マス空いていない。「!」や「?」のあとのスペースも空いていない。地の文の終わりに読点がない。自分もまぁ、書き始めた頃にはこんな感じであったが、せめて普通の文の終わりには読点はつけてほしい。これは小説を書く上での基本以前の話である。

さて、次に全体的な印象だが、読者を置いてけぼりにしている感がある。
大いに問題があるのが地の文である。今作品は昨今のラノベか、はたまたweb小説などの影響を受けているのか、ものすごく台詞が多く、地の文が少ない。別にこれが悪いと言っているわけではない。台詞が多い作品で面白い作品だってこの世には沢山あるし、小説は登場人物たちの面白いやりとりを楽しむものでもある。
しかし、台詞がメインとなる場合、地の文の重要さがかなり増す。如何に読者を混乱させずに、かつ語り部の考え(つまり語り部を担っている登場人物の考え)を伝え、誰が誰に向かって話しているか、そしてその状況がどんなもので、場所が何処なのか。そんな台詞だけでは表現しきれないことを短い地の文で表す技能が必要となる。
今作品は地の文が少ない上に、あまりにも淡泊で適当感漂う。また、台詞のやりとりにも厚みがない上に、不自然さが至る所に目立つ。

「私は仕事の挨拶にでも行ってこようかしら」
「社会人も大変だねぇ」
「当たり前よ。日本の未来は私たちにかかってるんだから」
「プッアハハハハッ」
「な、何よ!?」
「いや、よくそんな恥ずかしいこと言えるなと思ってさ」
「べ、別にいいじゃない。本当のことなんだし。祐一もあと四年したら社会人なんだからね」
「そうだねぇ。だったらこの四年間遊びまくらないとなぁ」
「遊ぶのもいいけど、ちゃんと勉強もしなさいよ?そうじゃないとまともな職なんてないんだから」
「分かってるよ。綾姉は本当に世話焼くの好きだね」
「昔からでしょ。今更変わるはずもないわ」
「それもそうだね。じゃ、もう行くね」
「ノブ君によろしくね」


作品から引用した文だが、何か不自然さを感じないだろうか。あまりにも淡泊で、内容の薄いやりとり。途中に地の文が全く挟まれていないが為に、厚みが減ってしまっているのだ。
また、やりとりがとても焦っているように感じられ、大変テンポが悪い。本来、我々が会話するときのような間が、この中にはないのだ。
さて、この文をこう変えてみるとどうだろう。

「私は仕事の挨拶にでも行ってこようかしら」
「社会人も大変だねぇ」
 しみじみ、そう思う。引っ越した当日に挨拶回りだなんてな。
「当たり前よ。なんていったって、日本の未来は私たちにかかってるんだから」
 とても真剣な眼差しでそう言う綾姉。に、日本の未来って……
「プッ、アハハ!」
「な、何よ!?」
「い、いやぁ、よくもまぁ、そんな恥ずかしいこと言えるな、と思って……」
 俺がそう指摘すると、綾姉は今更ながら恥ずかしさがこみ上げてきたのか、顔を真っ赤にさせた。
「べ、別にいいじゃない。本当のことなんだし。祐一もあと四年したら社会人なんだからねっ」
「うへぇ、そうだなぁ……。だったらこの四年間遊びまくらないと」
「遊ぶのもいいけど、ちゃんと勉強もしなさいよ? そうじゃないとまともな職なんてないんだから。就活をなめると怖いわよぉ」
「分かってるって。ホントに綾姉は世話好きだねぇ」
 思わず苦笑しながらそう言うと、綾姉はちょっと怒った顔で
「今更なによ。昔からのことでしょ。それに、祐一のためじゃない」
「はは、ま、それもそうか。じゃ、そろそろ行くよ」
「うん。あ、ノブ君によろしくね」


少しばかり、台詞の間に地の文を入れ、また台詞も出来るだけ自然に近づけてみた。こうするだけでも、同じ内容の会話であるにもかかわらず、だいぶ印象が変わる。
地の文と、会話の間を意識することで、ここまで文章は変えることが出来るのだ。

では、次に作品の内容に触れてみたいと思う。主人公の相沢祐一はいつも自分に世話を焼く幼馴染みの藤木綾を疎ましく思っていた。それは思春期男子特有の、自分でやる!と言った精神だろうか。女の子に頼り続けることに気恥ずかしさを感じていた。
と、これは実によくある話である。その後、大学に合格し、一人暮らしを勝ち取った祐一。やっと綾姉と離れられる……。と、ここでやっぱし転がり込んでくる幼馴染み。ありきたり。
まだ第一話で、それと言った大きな動きもないのだが、ここまではどこにでもある話をなぞったような展開だ。
つまり、オリジナリティが足りない。自分が見て欲しいという場面がないのだ。
作品を書いている中で、筆者は必ず「ここを是非とも読んで欲しい!」という場面を入れる。私だって「この台詞を言わせたい!そして読んでもらいたい!」と考えて、わざわざそんなシチュエーションに無理矢理展開を変えたことがある。
何だけれど、今作品にはそのようなことが感じられる部分がなかった。
作品の冒頭というものは、読者の関心を惹くためにも出来るだけインパクトがあり、次回に興味がそそられるものでなくてはならない。しかし、どうにも読んだことがあるようなこの作品は、読者の関心を惹きつけることが出来ないように思われる。
ただ、同じようなネタでも、書き方によっては興味を惹きつけることが出来る。
例えば幼馴染みが転がり込んでくるシーンをちょっと変えてみる。主人公が部屋でのんびりしてたら急に引っ越し業者が荷物を運び入れてくる。突然のことに主人公が驚いていると、そこに綾姉が登場。そこで続きはまた次回。
こうしてみると、急に現れたあの女性は誰だ! ていうか、主人公はどうなるの? なんていう興味が湧いてくる。
ネタが既成作品と似通っていても、展開の違い、進み方の違いで全く別のように感じることが出来る。つまるところ、これは書き方の問題である。巧く書けるか書けないか。ただそれだけのことなのだ。
一話目のインパクトが物語のすべてを左右すると言っても過言ではない。如何に興味を惹きつけるか。それが重要だ。

大変偉そうなことをつらつらと述べてきた。でも、小説を上達させるためには、時には他人の厳しい意見が必要だと私は思う。是非とも、この書評を読んで、さらに創作意欲をあがていってほしい。
それと、余計なお世話かもしれないが、作品には題名をつけた方がいい。名は体を表すとも言うからだ。
また、最後に一言アドバイスしておくと、もっと本を読んだ方がいいと思う。多くの本を読むことによって、そこから技術を吸収していくのだ。ただ、一つ忠告しておくとラノベばかり読むことはオススメしない。出来るだけ幅広く、また過去の作品を読むことを推奨する。過去の作品からは、技術だけじゃなく様々な知識も得られるからだ。

さて、これにて今回は書評を閉じたいと思う。ジョー様の次回作に期待したい。

掲載サイト 白の刹那
掲載ページ ジョーの小説
作者 ジョー
posted by ヘボラマン at 21:50| Comment(1) | TrackBack(0) | 小説レビュー web小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月20日

角川文庫 「800」 川島誠

激しく久しぶりの書評です。
800.jpg

私が師匠と心の中で崇める作家「川島誠」さんの作品。今作品は映画化されたこともある、ヒット作の一つです。

――あらすじ――

なぜ八〇〇メートルを始めたのかって訊かれたなら、雨上がりの日の芝生の匂いのせいだ、って答えるぜ。思い込んだら一直線、がむしゃらに突進する中沢と、何事も緻密に計算して理性的な行動をする広瀬。まったく対照的なふたりのTWO LAP RUNNERSが走って、競い合って、そして恋をする―。青空とトラック、汗と風、セックスと恋、すべての要素がひとつにまじりあった、型破りにエネルギッシュなノンストップ青春小説。


さて、今日もまた、くどくどと私独自の見解を述べていきたいなと思います。久々なので、しっかり話せるか不安ですけど。

この作品は、独特的である。
今まで、多くの純文学などの作品を読んできた人が読んだら、必ずそう思うであろう。いや、きっとライトノベルや、言ってしまうと官能小説、とりあえず何でもいいから小説を読んできた人には絶対に独特的だ、と思ってしまう。
こんなに、口語的で、情景描写がそれほど多くない作品は珍しい。
独特的な語り口。中沢と広瀬の二人の主人公が交互に語る一人称。ハッキリ言って、二人は性格も境遇も何もかもが違う。ただ、唯一共通していることは「TWO LAP RUNNER」、つまり800メートルの競技者であることだけだ。
そんな彼らが、800メートルと出会い、そして高校一年の秋の新人戦までを描いている。
期間的には、他の小説と比べ結構長い。一年くらいの期間を描いているからだ。しかし、作品の濃さは絶対にトップレベルのものだと思う。
とりあえず、これから細かい内容について、話していきたいと思う。

この作品は、分かりやすい。何故なら、砕けた口語表現のみで構成されているからだ。
つまるところ、主人公が心の中で思ったこと、また口で言ったことをそのまま文としてまとめているだけなのである。描写の付け加えや、主人公以外の心理描写、そんな著者の介入は一切ない。
だからだろうか、ものすごく共感できる点が多い。いや、共感させられていると言ってもいい。
引きづり込まれるのだ、作品の中へ。
気が付けば、隣に登場人物がいるような錯覚。無理のない設定。そして、まさに今の「若者」といったようなキャラクター。それらが、作品の世界と現実の世界との垣根を限りなくゼロに近づけることに成功したのである。

読者との一体感を味わえる。そんな作品の「800」だが、専門的な用語も数多く出る。陸上競技に関する記述は実に濃厚で、事前取材の緻密さを伺うことができる。
どうしても、スポーツ小説というものは安っぽくなりがちなのだ。特に筆者自身が興味を持った小説を衝動的に書いた、なんて作品は最低である。近年、そのような作品は小説のみならず、特に漫画に多く見られるが、この「800」にはそんなことはない。リアリティ溢れる競技場の描写。ランナー達の微妙な駆け引き。心理戦。これを読むだけで、800メートルという競技がある程度分かるのだ。

残念ながら現在、私としてはこの「800」並みにインパクトのある作品を、筆者である川島誠は書けていないのではないかと思う。およそ四年ぶりの書き下ろし長編である「NR(ノーリターン)」は四年ぶりのくせして今までの中では一番インパクトに欠ける作品に感じられた。
「800」並みのインパクトある作品を再び読みたいと思う次第だ。
posted by ヘボラマン at 01:06| Comment(6) | TrackBack(1) | 小説レビュー 角川文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年12月29日

web小説 Like or Love 盗鬼

さて、前回の書評からかなり間が空きましたが第4弾行きまーす。

今回は前回と同じ相互リンクサイトの水空の盗鬼様の作品Like or Loveを紹介します。

――あらすじ――
楓と郁は会うたび喧嘩する。
それは、他愛無い喧嘩である。楓は、彼のことが好きだ。けど、男としてじゃなく、友達としてだけど。
ある日、楓は郁に想いを伝えられる。自分は郁のことをどのように思っているのか。
LikeとLoxeの狭間で揺れ動く学園コメディ。


中編の本作品。なんていうかありふれた『幼馴染み』→『恋人』の過程を描いた作品である。
そのテーマを元にして、一貫した作品が書かれている点は評価すべきところだ。
では、これから細かいところをしっかりと検証していきたい。

まずこの作品。主に楓視点の一人称である。
描写が少なくスッキリとした文体である言えよう。また楓の内心はしっかりと描写され、LikeとLoveの間で揺れ動くところが実に巧みに書かれていると思われる。
また意外と起承転結がハッキリとしている。
最初の『起』は現状把握。郁と楓の関係や、周りの様子。そして二人が『親友』であるということの確認。
次の『承』は楓の気持ちの確認。そして郁に恋人ができたという噂。これによって楓の考える二人の関係の根底が揺らいでくる。この辺りから楓は郁との関係を何度も自らの中で確認している、これは今の関係が崩れるのを恐れ、また郁に恋人ができるということに何故だか危機感を感じているからだ。そのような揺れ動く楓の気持ちを彼女の行動で表せている点は感心する。
そして『転』。ここで楓は郁の気持ちを知ってしまう。郁との関係はあくまでも『親友』であり、その関係が『恋人』になるなんて微塵も思わず、また決して『認める』ことのなかった楓にとってはかなりショックな事件で、『承』で揺らいでいた二人の関係が完璧に消え去った瞬間でもある。
ここで楓は自分の想いについて見つめ直すが、五里霧中の状態で結論が出ない。そしてそこに郁の事故という『きっかけ』があって楓は自らの気持ちに気づくことになる。
まぁ、ここまで言ってしまうと『結』は二人は新たな関係として出発するということだ。『親友』という関係も残っているだろうが、主に『恋人』という肩書きで楓と郁という二人のキャラクターはこれからを過ごしていくだろう。

このように、今作品はしっかりと筋道を立て、物語の基本中の基本『起承転結』を守ってストーリーを進めている。これは基本ながらも難しく、こう形が整っている作品はそう多くはない。

では、この作品の問題点を羅列していきたい。
ハッキリ言うと物語以前の問題だが、少しばかり『小説』としては言い難い点がある。
まずは沈黙を表す『…』
この作品では『…』ではなく『・』を使っている。これはイタイ。小説では『…』が基本なので、これからは『…』を使ってほしい。最低限のマナーでもあるので。
また『!』や『?』の後には必ず半角あけなくてはならない。
例を挙げると
「いいかぁ!すぐに帰るんだぁ!」は×
「いいかぁ! すぐに帰るんだぁ!」は○
というわけだ。この点さえ守ればしっかりとした小説の形式となる。
小説を書いていくならば成長しなければならない。まぁ、私も昔は守っていなかったわけだが今ではしっかり守っている。これを期に直すと最高だろう。

さて、話が少し脱線してしまった。では作品に戻ろう。
この作品は少し煩わしいところがあった。
まずは楓の心情。郁との関係はあくまでも『親友』。郁のことは友達として『好き』。
ハッキリ言って、このことを何度も復唱しすぎた。あまりに繰り返しいうものだから読者は「だからもうそれは分かってるつーの!」とうんざりしてしまう。
そのことを強調すべき場面で強調すべきであり、無意味に連呼するのは逆に作品の出来を悪くしてしまう。
それに何故だかこの作品を読んでいて作品の世界に入れない。
それは(これは思いっ切り私の見解だが)主人公(楓)が一人でボケ、一人でつっこんでいるからであろうと私は考える。
つまり読者は何も考えなくてもキャラクターが勝手に明かしてしまう。それもすぐ後に。これでは読者はただ文字を見るだけになってしまう。これは激しくマイナスだ。
また文末表現が同じのを多用しすぎている。『〜った』や『〜た』。同じ文末を続けて何度も使ったり、短い間隔で使うとハッキリ言ってリズムが一緒でおもしろくない。
何も、答えられなかった。
郁のことは何でも知っていると・・・侮っていた。
生まれたときから同じ・・・とは言いがたいが、幼稚園に入る前から一緒にいる私たち。
私のお父さんと、郁のお父さんが親友で、
私のお母さんと、郁のお母さんが親友で。
だから、私たちは親友で。
だけど、お互いに恋愛感情と言うものは無かった。
むしろ、恋愛について話していたほどの仲だった。
あの出来事が起こるまでは。
中学1年生のある日、新斗君に告白された。
私は、そのとき彼が好きだった。
勿論、男としてじゃなく、友達として。
だから振った。
恋人同士になることを拒否した。
何故かは分からないが、それ以来互いの恋愛に関しては話さなくなった。
・・・そういえば昨日、何ヶ月ぶりか分からないが、私の家の前で郁に引き止められた。

この通り、文末が同じ文が目立つ。これは工夫さえすれば避けられることなので、今後から気をつけるべきであろう。

以上のことを踏まえて、この作品は形が整った作品ではあるが、細部にその形を乱してしまうところがあり実に惜しい作品であったといえる。
前作と比べるのは酷だが、今作は少々前作より劣っていただろう。
暇つぶし程度に読むのはいい。物語もいい。でも、細部をもっと整えれば、大変よい作品になるだろう。
では、この辺で今回の書評を締めくくりたいと思う。

掲載サイト  水空
掲載ページ  Like or Love
作者  盗鬼
posted by ヘボラマン at 18:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説レビュー web小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年11月07日

web小説 「Double Life」 盗鬼

書評第3弾も、web小説でいきまーす!

相互リンクサイト水空の盗鬼様の作品Double Lifeを紹介します。

――あらすじ――
無神経な親に騙されて女の子と同居することになってしまった主人公の香坂風紀。
その女の子というのは学校一可愛い、秋本明日香。
実は、風紀にはそのことを素直に喜べない、深い理由があった。
そんな彼らを中心に渦巻く、笑いあり、感動ありの学園ラブコメディ


この作品はすでに完結しており、全50話という構成になっている。
なかなかの力作。
設定としては、学園ラブコメディとも述べたが、同居ドタバタラブコメディとも言えるだろう。
まず、良いところをつらつらと述べていきたいと思う。

まず、伏線、過去、そして今。
この3つが上手くつながっている。
主人公、風紀は過去に辛い『過去』があり、その所為で女性恐怖症という『伏線』があり、明日香という女の子と同居する『今』がある。
一見して、バラバラの事柄だが、実際は深く関係している。
辛い過去があるからこそ風紀の伏線を張ることができ、そしてそれを踏まえて物語を盛り上げる為に女の子と(しかも美少女)との同居という設定が生まれる。
しかも、そのような設定は主人公、風紀のみに存在する物ではない。
ヒロインである明日香もまた、辛い過去を持っている。
ただ、普通に辛い過去ではない。
どこか、風紀と似たような過去を持つ。
また、その過去があったから、明日香は風紀と出会っているのだ。
過去はすべて、伏線と今とをつなげている。
そのことが一番わかりやすく、また間接的に暗示させている点は目を見張るところであろう。

また、物語の構成が実にシンプルだ。
だいたい、この物語は4分割されている。
まず、風紀と明日香の出会い。
そして、明日香の過去。
その次に、学園生活。映画研究部の映画撮影。
ラストに、風紀の過去と、二人の気持ち。
まぁ、このような感じになっていると思われる。
その4シーンすべてに、簡単な起伏があり、それでいて単体でも物語にしっかりとなる。この点もまた、なかなかの技量である。
出会いはなかなか衝撃的なものだ。
自分の家、新しく住む部屋。そこの同居人が同い年のかなりの美少女だとすれば誰でもぶったまげる。
もちろん、主人公である風紀だってぶったまげた。
高校1年生と、これまた微妙なお年頃であるが故に、さらに問題は深刻だ。
だけど、とりあえず2人はその現状を受け入れ、何とかしていこうとする。
その前向きな流れに、すんなりと読者は物語に入っていけると思う。

そして、明日香の過去。
このシーンはラストの風紀の過去のシーンの際に、とても重要なものになる。
もしここで、明日香の過去が明かされず、解決しないままだった場合は、ラストのシーンは面白味が半減する。
なぜなら、明日香は未だに過去を引きずっている。風紀と、元彼の大和を重ねてしまっているのだ。
そういう流れでいくのも悪くはないが、やはり明日香の過去のシーンは必要不可欠で、そのお陰でラストのシーンが際だっていると言えよう。

映画研究部のシーンは
さほど深い意味を持たないが、とりあえず脇を固める人物の確定、または新出という意味合いではなかなか重要度を増す。
なぜなら、他のシ−ンはメインの2人がほぼ重要であって、彼ら2人の問題に多くの脇役たちが登場するのは不可能だからだ。
しかし、脇役が出なければ50話もの長編を支えることは難しい。
なので、彼ら脇役をしっかりと確立させるシーンが必要となる。そのシーンがこの映画研究部の映画撮影のシーンだ。
また、このシ−ンは風紀と明日香の仲をさらに深めるシーンでもあるので、以外と重要度が高かったりする。

さて、ラストのシーンについてだが、このシーンは結構長く、太い。
まず、風紀の過去のキーマンである凛が登場する。
彼女の登場によって、風紀は明日香の存在を考えさせられる。
また、同様に明日香も彼女の登場で風紀に対する自分の想いに気づくのだ。
交錯する3人の想い。
これがまた、最後の一波乱をしっかりおこしてくれる。
学園祭というイベントも加味し、クライマックスは一気にヒートアップしてくるのだ。
最後、風紀が自分の想いに気づくが、そのきっかけを作ったのが3つ目のシーンで固まった脇役たちだ。
つまり、ラストのこのシーンはすべてのシーンをしっかりと加味し、それでいて盛り上がるシーンを作り上げているのだ。


さて、ここまで良いことのみを述べてきた。
実際、この作品は良い作品なのだが、完璧なわけではない。
これからは、少しばかり私が気になる点を述べていきたいと思う。
まず、風紀の女性恐怖症。
実際今作品でのコンセプトの一つであるこれが、全く持って機能していない。そう、機能していないのだ。
主人公は普通に明日香やその周りの女子たちと接しているし、これが問題となる大きなイベントがラストまでほとんど無い。
せっかくそのような設定をもうけているのだから、もっと活用すべきだ。
それに、ラストで無理矢理女性恐怖症を持ってきている点も苦しかった。
そうしてしまうことによって、最後の締まりが悪くなっていると思う。
最後の風紀の告白のシーンでも、女性恐怖症のことは言わない方が良かったと私は思う。
女性恐怖症という設定を使うのなら、作品を通してしっかりとそのことをアピールする必要があった。

そして、もう一つ。それが凛と風紀の関係だ。
先ほど、凛の登場によって風紀と明日香が自分の気持ちに気づいていくと述べた。実際、凛の存在は重要だ。
しかし、凛と風紀の関係は少しばかりおかしかった。
風紀は凛のことでいろいろと心の傷を負った。それは女性恐怖症というもので表れている。
転校してきて最初の内の関係は実に良かった。
風紀は凛をしっかりと拒絶していたのだから。
しかし、段々と風紀と凛の関係は普通の男女の関係。否、凛が風紀を追いかけ、風紀はそれほど拒絶、拒否しない関係となってしまった。
こうなってしまうと、風紀の心の傷はこうも簡単なものだったのかと疑ってしまう。こうも簡単に許し、普通に接することができるのかと。
まぁ、クラスメートになってしまった以上、それほど邪険に扱えないだろうが、それにしても風紀は凛に対して無防備であり、明日香との対応とそれほど変わらなかった点はマズかった。


こう、長々と述べてきが、この作品はそこそこの作品と評する。
少々酷な評かもしれないが、暇つぶしで読むのには最適で、純粋に文学を楽しむには物足りない作品だ。
だが、ノリもテンポも悪くなく、面白いことには変わりない。
軽い気持ちで、読んでみてはどうだろうか。私としては、そのような手軽さがある作品だと思う。
さらに推敲し、文を磨けば良くなるが、これはこれで荒削りなところが良い。
荒削りなところがまた魅力ということで、今回の書評は締めくくりたいと思う。

掲載サイト  水空
掲載ページ  Double Life
作者  盗鬼
posted by ヘボラマン at 22:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説レビュー web小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月30日

web小説 「CAMPUS LIFE」 椿瀬誠

書評2発目はweb小説です。
CL1.jpg
私の師匠にあたる椿瀬誠様の作品「CAMPUS LIFE」を紹介します!
現在、この作品の続編が椿瀬様のサイトAnother Landにて好評連載中です。
―――あらすじ―――
運命の出会いを求め、地方の大学に進学した、主人公・真部祐紀。
ボランティアサークルで、出会った「鎌井直」と、いいカンジ。
なんだけど……祐紀には、誰にも言ってないヒミツがあった。


この作品、設定が実に面白い。
かなりのネタバレになるが、コンセプトは逆転カップルラブコメディー。
つまり、オカマとオナベのカップルである。
今作での主人公は辛い過去があり、地元から逃げてきた一人暮らしの大学生の真部祐紀。
実際、今作では明かされないがとんでもない過去を持っているオナベだ。
その辺は続編「CAMPUS LIFE R」を読んで頂きたい。
web小説でも舞台にされることがあまり無い大学という世界。
高校での学園生活というものが主流の現在のweb小説ラブコメとはひと味違う味が出ている。
地元を飛び出し、いざキャンパスライフを満喫するぜ!と意気込む主人公。
心の優しい女の子が一杯いると思って入ったサークルはなんとマッチョ2人しかいないむさ苦しいサークルだった。
そこで登場のヒロイン兼オカマ、鎌井直、本名鎌井直紀。
その子の登場で主人公はそのサークルにとどまることを決める。
そして、その子に様々な方法でアプローチをかけていくのだ。

この作品で目を見張るところと言えば、キャラクターの個性である。
実際、メインとしてはわずか4人しか出てきていないが、それぞれが強烈に濃い。めちゃくちゃ濃い。
メインカップルの二人がオカマにオナベっていうのもかなり衝撃的だが、ボランティアサークルの会長、副会長のマッチョコンビもかなり濃い。

「姫、ヅラってどういうことさ?」
「ごめんなさい……実は私、男なんです。名前も本当は、鎌井直紀です。……すみません……」
あぁ、冗談じゃなかったんだね……。少し気が遠くなってきた。
親に勘当されたのも、これが理由なのかな?
「アツシィィィィィ」
「ツヨシィィィィィ」
細木さんと剛田さんが、抱き合ってテイクオフ――現実逃避してしまった。


思わず吹き出した
この二人の行動は実に面白い。
脇役に徹しながらも、存在感を存分にアピールしており、物語のテンションを高める重要な位置にあったかと思われる。
個性豊かなキャラクター達がこの物語をしっかりと牽引していっているのは間違いない。
しかし、濃いキャラクターばかりで脇役でもいいから普通のキャラクターが出てきてほしかった。
平凡なキャラクターが出てくれば、周りの個性豊かなキャラクターがさらに引き立てられ、それに彼らの行動にツッコミなどを入れられたのではないだろうか?
個性豊かなキャラクター達をさらに際だたせる為の工夫が少しほしかったのが本音であるが、所詮工夫である。そんなキャラがいなくてもメインのキャラ達はかなり目立っていると言えるだろう。

最後に、話の構成について述べたいと思う。
この話は春から始まり、秋で終わった。
その約半年の間を8話、いやプロローグ、エピローグを除くと6話の中にまとめ上げた技術は素晴らしいと思う。
実際、それだけの期間を書くとなると10話、20話いってしまう場合もある。
しかも、恋愛が成就するまでの流れである。
何故、6話で丸く収められたかというと、起承転結がハッキリしているからだ。
最近の長編、または恋愛小説は起承転結が起承承転転結転結って感じになっていると思う。
出会い、恋に落ちる。でも、その恋を成就させるには壁を乗り越えなくてはならない。そして、何とか乗り越えるも、またも新たな壁が立ちはだかる。
つまり、アッサリとゴールインさせないのだ。
こう、一つの壁を乗り越えゴールしたこの作品はかなりスマートな作品だ。
しかし、短い分欠落した部分も多く、やはり6話分で約半年分は苦しかったかもしれないと思われる。
自分としては、最終話にあたるエピローグはいらなかったのではないかと思う。まぁ、続編を書いているので今では必要不可欠な話だが。
後日談というものはあまり書かない方がいいと私は考える。
苦難を乗り越えたそのあとは、読者の想像にお任せする。読み終わったあとも、読者はその後どうなったかを自分で想像することによって物語の余韻につかることができるのだ。
それに、いらぬ伏線を張っている点も少し気になる。
続編で明かされているとはいえ、真部祐紀の伏線はここでは必要なかったのではないだろうか?
続編の最初で伏線を張っていても十分間に合ったと私は考える。

書評のまとめとしては、かなりスマートで強烈な作品であったといえる。
その分、少し長さが苦しかったかもしれないし、意味のない伏線があった。
物語としてはかなり面白く、個性的キャラにかなり笑わされる物語だ。
台詞のところを太字にしてあるので読みやすい点も良い。
なかなかオススメな作品であると評し、書評を締めくくりたいと思う。

掲載サイト  Another Land
掲載ページ  CAMPUS LIFE
作者  椿瀬誠

posted by ヘボラマン at 20:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説レビュー web小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月29日

角川文庫 「NHKにようこそ!」 滝本竜彦

では、書評1発目いっきまーす!
NHK.jpg

まずは、私が尊敬する作家の一人、滝本竜彦氏の『NHKにようこそ!』
作者は「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」で第5回角川学園小説大賞特別賞を受賞しデビュー。コレが2作目。

―――あらすじ―――
自分のひきこもりの原因にはある陰謀が絡んでいると信じ込んだ佐藤達広。彼はその陰謀に対峙することを決意する。そんな達広の前に現れたのは、日傘を差した清楚な美少女だった。彼女はなぜが、達広につきまとい始めて…。


これは本当に俺独自の見解なので文句はつけないように。かなり偉そうですがそこは大目に見てください。

この作品。俺は読んでいて真っ先に思ったことは「興味深い」ということだ。
まず、この作品のテーマの着眼点。
「引きこもり」というのはあまりパッとしないテーマだ。しかし、今や一種の社会現象とでもいえる「引きこもり」時代の流れを一早く取り込んでいると思える。
現に、引きこもり小説などという物を書いている作家などいない。いるわけがない。
しかし、彼はその引きこもりをテーマとして扱っている。
これは実に斬新で奇抜なアイディアだと俺は思う。だからこそ、この作品は独特な良さが出ていると思う。

更に、滝本竜彦の言い回しが実に巧みだ。
地味な「引きこもり」というテーマをどうやって派手に目立たすか。
その目立たす為の脇役として、「山崎」というキャラが出てきたのだと思う。
「山崎」は、引きこもりにありがちなヲタクだ。そのヲタクっぷりを全面に押し出している。そして、「佐藤」がそれに染まっていく。
実にシンプルだが、その染まりきるまでの「佐藤」の反応が実に初々しい。きっと、現に存在するヲタクたちも最初はそうだったのだろう。
最初の内は否定しながらも、なかなか手放すことができない。そして、いつの間にか「山崎」のように染まりきっている。
まさに、ヲタクができるまでを見ているようだ。

さらに流石青春文学。ちゃんとしたヒロインまでも出てきている。
それが謎の美少女「中原岬」
このキャラクターは背景に虐待という過去を持つ。
これもまた、現代の社会問題である。
その虐待の過去に苦しみ、自分を見下し。自分より駄目な人間を探す。これは自分を安心させるため、現に今の社会の人たちもこのような傾向があると思える。
そして彼女は、「自殺」という手段に出る。今日、自殺もまた社会問題となっている。彼女は、あまりにも自分のことを駄目と思いこみ、そして自分より駄目な「佐藤」という人物に、拒絶されてしまったことに絶望したのだろう。
自分はもう駄目だ。まさに、現代の人たちが思うようなことを思い、自殺しようとする。

他に、この作品には大きな魅力がある。それが著者の「滝本竜彦」の経験である。
彼は大学を中退し、引きこもりのような生活を送っていた。
実際、そのおかげでこの作品の舞台は明確に確立され、かなりリアルに描かれている。
あまりにもリアルでなければ呆れるだけだし、逆にリアルすぎてもおもしろくない。
彼の作品は自らの経験を元にちょうどよい辺りで書かれているのだ。
故に、この作品を一言でまとめるとすると、この作品は今の社会問題を色濃く反映させ、自らの経験も交えた、コミカルな作品といえよう。

では、失礼しまーす。
posted by ヘボラマン at 22:14| Comment(0) | 小説レビュー 角川文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

小説レビュー企画 立ち上げ!

はい、どーもヘボラマンです。
この度、20000hitを記念して、小説レビューを始めたいと思います。
様々な作品のレビューを片っ端から批評していきたいと思います。
時に厳しく、時にベタ褒め。
まぁ、とりあえず良い作品を世に知らしめ、良くない作品は筆者に改善点を指摘してあげる。
まさに超迷惑でもあり、少しばかり有り難い(?)存在になればいいなと思っております。
とりあえず、最初の内は相互リンク様の小説を次々にレビューしていきたいと思っています。
めちゃくちゃ辛口になる場合があります。
気に入らなかった場合はすぐにメールでもweb拍手でも何でもいいので管理人に文句言ってやってください。
すぐに掲載を取りやめ、お詫びに行きますので。
また、『評価をつけてほしい』とか『感想をいただきたい』とかいう人がいましたら、適当に管理人にお知らせください。
速攻読みに行きますから。レビューは遅くなるかもしれないけど。

とりあえず、レビューです。レビューやります。
更新はそれほど多くできないと思います。せいぜい月に何度か、とか。
まぁ、気長にやりますよ、気長に。
では、これからヨロシク〜。
posted by ヘボラマン at 21:48| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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