2005年10月29日

角川文庫 「NHKにようこそ!」 滝本竜彦

では、書評1発目いっきまーす!
NHK.jpg

まずは、私が尊敬する作家の一人、滝本竜彦氏の『NHKにようこそ!』
作者は「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」で第5回角川学園小説大賞特別賞を受賞しデビュー。コレが2作目。

―――あらすじ―――
自分のひきこもりの原因にはある陰謀が絡んでいると信じ込んだ佐藤達広。彼はその陰謀に対峙することを決意する。そんな達広の前に現れたのは、日傘を差した清楚な美少女だった。彼女はなぜが、達広につきまとい始めて…。


これは本当に俺独自の見解なので文句はつけないように。かなり偉そうですがそこは大目に見てください。

この作品。俺は読んでいて真っ先に思ったことは「興味深い」ということだ。
まず、この作品のテーマの着眼点。
「引きこもり」というのはあまりパッとしないテーマだ。しかし、今や一種の社会現象とでもいえる「引きこもり」時代の流れを一早く取り込んでいると思える。
現に、引きこもり小説などという物を書いている作家などいない。いるわけがない。
しかし、彼はその引きこもりをテーマとして扱っている。
これは実に斬新で奇抜なアイディアだと俺は思う。だからこそ、この作品は独特な良さが出ていると思う。

更に、滝本竜彦の言い回しが実に巧みだ。
地味な「引きこもり」というテーマをどうやって派手に目立たすか。
その目立たす為の脇役として、「山崎」というキャラが出てきたのだと思う。
「山崎」は、引きこもりにありがちなヲタクだ。そのヲタクっぷりを全面に押し出している。そして、「佐藤」がそれに染まっていく。
実にシンプルだが、その染まりきるまでの「佐藤」の反応が実に初々しい。きっと、現に存在するヲタクたちも最初はそうだったのだろう。
最初の内は否定しながらも、なかなか手放すことができない。そして、いつの間にか「山崎」のように染まりきっている。
まさに、ヲタクができるまでを見ているようだ。

さらに流石青春文学。ちゃんとしたヒロインまでも出てきている。
それが謎の美少女「中原岬」
このキャラクターは背景に虐待という過去を持つ。
これもまた、現代の社会問題である。
その虐待の過去に苦しみ、自分を見下し。自分より駄目な人間を探す。これは自分を安心させるため、現に今の社会の人たちもこのような傾向があると思える。
そして彼女は、「自殺」という手段に出る。今日、自殺もまた社会問題となっている。彼女は、あまりにも自分のことを駄目と思いこみ、そして自分より駄目な「佐藤」という人物に、拒絶されてしまったことに絶望したのだろう。
自分はもう駄目だ。まさに、現代の人たちが思うようなことを思い、自殺しようとする。

他に、この作品には大きな魅力がある。それが著者の「滝本竜彦」の経験である。
彼は大学を中退し、引きこもりのような生活を送っていた。
実際、そのおかげでこの作品の舞台は明確に確立され、かなりリアルに描かれている。
あまりにもリアルでなければ呆れるだけだし、逆にリアルすぎてもおもしろくない。
彼の作品は自らの経験を元にちょうどよい辺りで書かれているのだ。
故に、この作品を一言でまとめるとすると、この作品は今の社会問題を色濃く反映させ、自らの経験も交えた、コミカルな作品といえよう。

では、失礼しまーす。


posted by ヘボラマン at 22:14| Comment(0) | 小説レビュー 角川文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。