2005年11月07日

web小説 「Double Life」 盗鬼

書評第3弾も、web小説でいきまーす!

相互リンクサイト水空の盗鬼様の作品Double Lifeを紹介します。

――あらすじ――
無神経な親に騙されて女の子と同居することになってしまった主人公の香坂風紀。
その女の子というのは学校一可愛い、秋本明日香。
実は、風紀にはそのことを素直に喜べない、深い理由があった。
そんな彼らを中心に渦巻く、笑いあり、感動ありの学園ラブコメディ


この作品はすでに完結しており、全50話という構成になっている。
なかなかの力作。
設定としては、学園ラブコメディとも述べたが、同居ドタバタラブコメディとも言えるだろう。
まず、良いところをつらつらと述べていきたいと思う。

まず、伏線、過去、そして今。
この3つが上手くつながっている。
主人公、風紀は過去に辛い『過去』があり、その所為で女性恐怖症という『伏線』があり、明日香という女の子と同居する『今』がある。
一見して、バラバラの事柄だが、実際は深く関係している。
辛い過去があるからこそ風紀の伏線を張ることができ、そしてそれを踏まえて物語を盛り上げる為に女の子と(しかも美少女)との同居という設定が生まれる。
しかも、そのような設定は主人公、風紀のみに存在する物ではない。
ヒロインである明日香もまた、辛い過去を持っている。
ただ、普通に辛い過去ではない。
どこか、風紀と似たような過去を持つ。
また、その過去があったから、明日香は風紀と出会っているのだ。
過去はすべて、伏線と今とをつなげている。
そのことが一番わかりやすく、また間接的に暗示させている点は目を見張るところであろう。

また、物語の構成が実にシンプルだ。
だいたい、この物語は4分割されている。
まず、風紀と明日香の出会い。
そして、明日香の過去。
その次に、学園生活。映画研究部の映画撮影。
ラストに、風紀の過去と、二人の気持ち。
まぁ、このような感じになっていると思われる。
その4シーンすべてに、簡単な起伏があり、それでいて単体でも物語にしっかりとなる。この点もまた、なかなかの技量である。
出会いはなかなか衝撃的なものだ。
自分の家、新しく住む部屋。そこの同居人が同い年のかなりの美少女だとすれば誰でもぶったまげる。
もちろん、主人公である風紀だってぶったまげた。
高校1年生と、これまた微妙なお年頃であるが故に、さらに問題は深刻だ。
だけど、とりあえず2人はその現状を受け入れ、何とかしていこうとする。
その前向きな流れに、すんなりと読者は物語に入っていけると思う。

そして、明日香の過去。
このシーンはラストの風紀の過去のシーンの際に、とても重要なものになる。
もしここで、明日香の過去が明かされず、解決しないままだった場合は、ラストのシーンは面白味が半減する。
なぜなら、明日香は未だに過去を引きずっている。風紀と、元彼の大和を重ねてしまっているのだ。
そういう流れでいくのも悪くはないが、やはり明日香の過去のシーンは必要不可欠で、そのお陰でラストのシーンが際だっていると言えよう。

映画研究部のシーンは
さほど深い意味を持たないが、とりあえず脇を固める人物の確定、または新出という意味合いではなかなか重要度を増す。
なぜなら、他のシ−ンはメインの2人がほぼ重要であって、彼ら2人の問題に多くの脇役たちが登場するのは不可能だからだ。
しかし、脇役が出なければ50話もの長編を支えることは難しい。
なので、彼ら脇役をしっかりと確立させるシーンが必要となる。そのシーンがこの映画研究部の映画撮影のシーンだ。
また、このシ−ンは風紀と明日香の仲をさらに深めるシーンでもあるので、以外と重要度が高かったりする。

さて、ラストのシーンについてだが、このシーンは結構長く、太い。
まず、風紀の過去のキーマンである凛が登場する。
彼女の登場によって、風紀は明日香の存在を考えさせられる。
また、同様に明日香も彼女の登場で風紀に対する自分の想いに気づくのだ。
交錯する3人の想い。
これがまた、最後の一波乱をしっかりおこしてくれる。
学園祭というイベントも加味し、クライマックスは一気にヒートアップしてくるのだ。
最後、風紀が自分の想いに気づくが、そのきっかけを作ったのが3つ目のシーンで固まった脇役たちだ。
つまり、ラストのこのシーンはすべてのシーンをしっかりと加味し、それでいて盛り上がるシーンを作り上げているのだ。


さて、ここまで良いことのみを述べてきた。
実際、この作品は良い作品なのだが、完璧なわけではない。
これからは、少しばかり私が気になる点を述べていきたいと思う。
まず、風紀の女性恐怖症。
実際今作品でのコンセプトの一つであるこれが、全く持って機能していない。そう、機能していないのだ。
主人公は普通に明日香やその周りの女子たちと接しているし、これが問題となる大きなイベントがラストまでほとんど無い。
せっかくそのような設定をもうけているのだから、もっと活用すべきだ。
それに、ラストで無理矢理女性恐怖症を持ってきている点も苦しかった。
そうしてしまうことによって、最後の締まりが悪くなっていると思う。
最後の風紀の告白のシーンでも、女性恐怖症のことは言わない方が良かったと私は思う。
女性恐怖症という設定を使うのなら、作品を通してしっかりとそのことをアピールする必要があった。

そして、もう一つ。それが凛と風紀の関係だ。
先ほど、凛の登場によって風紀と明日香が自分の気持ちに気づいていくと述べた。実際、凛の存在は重要だ。
しかし、凛と風紀の関係は少しばかりおかしかった。
風紀は凛のことでいろいろと心の傷を負った。それは女性恐怖症というもので表れている。
転校してきて最初の内の関係は実に良かった。
風紀は凛をしっかりと拒絶していたのだから。
しかし、段々と風紀と凛の関係は普通の男女の関係。否、凛が風紀を追いかけ、風紀はそれほど拒絶、拒否しない関係となってしまった。
こうなってしまうと、風紀の心の傷はこうも簡単なものだったのかと疑ってしまう。こうも簡単に許し、普通に接することができるのかと。
まぁ、クラスメートになってしまった以上、それほど邪険に扱えないだろうが、それにしても風紀は凛に対して無防備であり、明日香との対応とそれほど変わらなかった点はマズかった。


こう、長々と述べてきが、この作品はそこそこの作品と評する。
少々酷な評かもしれないが、暇つぶしで読むのには最適で、純粋に文学を楽しむには物足りない作品だ。
だが、ノリもテンポも悪くなく、面白いことには変わりない。
軽い気持ちで、読んでみてはどうだろうか。私としては、そのような手軽さがある作品だと思う。
さらに推敲し、文を磨けば良くなるが、これはこれで荒削りなところが良い。
荒削りなところがまた魅力ということで、今回の書評は締めくくりたいと思う。

掲載サイト  水空
掲載ページ  Double Life
作者  盗鬼
posted by ヘボラマン at 22:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説レビュー web小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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