2007年03月02日

web小説 無題 ジョー

どーも、皆さんお久しぶりです。前回の書評からは激しく間が開いておりますが、今回、書評依頼が舞い込んできましたので、気合いを入れて一発やりたいと思います。

今回、書評する作品はジョー様のオリジナル作品です。

――あらすじ――
主人公の相沢祐一この間大学に受かったばかりの一八歳。彼には三つ年上の藤木綾という幼馴染みがいた。
あれこれしてくれる彼女に、有り難く思いつつも、気恥ずかしく思う祐一。大学進学をきっかけに、念願の一人暮らしを手に入れたはずだったが……。一つ屋根の下の、ドタバタラブコメディ


現在はまだプロローグと第一話(四部構成)しか掲載されておりません。作品としては、筆者の処女作というそうです。
では、これから書評に入りたいと思いますが、基本的に辛口でいくのであしからず。処女作と言うことですが、容赦無しでお願いします^^;

さて、本作を一通り読ませてもらって思ったこと。もちろん良い点、悪い点両方があった。しかし、どうしても処女作というわけで、悪い点が遙かに多く、またよい点も指摘して褒め称えることが出来るほどではないものであった。
あまりに厳しめに言って、著者の今後の創作意欲を削ぐことになってしまってはいけないのだが、今後も読者を「楽しませる」作品を書いていって欲しいと思うので、しっかりと問題点を指摘していきたい。

まず、基本的な知識に関して。今作品はだいぶ基本的事項に欠落が見られた。段落の頭が一マス空いていない。「!」や「?」のあとのスペースも空いていない。地の文の終わりに読点がない。自分もまぁ、書き始めた頃にはこんな感じであったが、せめて普通の文の終わりには読点はつけてほしい。これは小説を書く上での基本以前の話である。

さて、次に全体的な印象だが、読者を置いてけぼりにしている感がある。
大いに問題があるのが地の文である。今作品は昨今のラノベか、はたまたweb小説などの影響を受けているのか、ものすごく台詞が多く、地の文が少ない。別にこれが悪いと言っているわけではない。台詞が多い作品で面白い作品だってこの世には沢山あるし、小説は登場人物たちの面白いやりとりを楽しむものでもある。
しかし、台詞がメインとなる場合、地の文の重要さがかなり増す。如何に読者を混乱させずに、かつ語り部の考え(つまり語り部を担っている登場人物の考え)を伝え、誰が誰に向かって話しているか、そしてその状況がどんなもので、場所が何処なのか。そんな台詞だけでは表現しきれないことを短い地の文で表す技能が必要となる。
今作品は地の文が少ない上に、あまりにも淡泊で適当感漂う。また、台詞のやりとりにも厚みがない上に、不自然さが至る所に目立つ。

「私は仕事の挨拶にでも行ってこようかしら」
「社会人も大変だねぇ」
「当たり前よ。日本の未来は私たちにかかってるんだから」
「プッアハハハハッ」
「な、何よ!?」
「いや、よくそんな恥ずかしいこと言えるなと思ってさ」
「べ、別にいいじゃない。本当のことなんだし。祐一もあと四年したら社会人なんだからね」
「そうだねぇ。だったらこの四年間遊びまくらないとなぁ」
「遊ぶのもいいけど、ちゃんと勉強もしなさいよ?そうじゃないとまともな職なんてないんだから」
「分かってるよ。綾姉は本当に世話焼くの好きだね」
「昔からでしょ。今更変わるはずもないわ」
「それもそうだね。じゃ、もう行くね」
「ノブ君によろしくね」


作品から引用した文だが、何か不自然さを感じないだろうか。あまりにも淡泊で、内容の薄いやりとり。途中に地の文が全く挟まれていないが為に、厚みが減ってしまっているのだ。
また、やりとりがとても焦っているように感じられ、大変テンポが悪い。本来、我々が会話するときのような間が、この中にはないのだ。
さて、この文をこう変えてみるとどうだろう。

「私は仕事の挨拶にでも行ってこようかしら」
「社会人も大変だねぇ」
 しみじみ、そう思う。引っ越した当日に挨拶回りだなんてな。
「当たり前よ。なんていったって、日本の未来は私たちにかかってるんだから」
 とても真剣な眼差しでそう言う綾姉。に、日本の未来って……
「プッ、アハハ!」
「な、何よ!?」
「い、いやぁ、よくもまぁ、そんな恥ずかしいこと言えるな、と思って……」
 俺がそう指摘すると、綾姉は今更ながら恥ずかしさがこみ上げてきたのか、顔を真っ赤にさせた。
「べ、別にいいじゃない。本当のことなんだし。祐一もあと四年したら社会人なんだからねっ」
「うへぇ、そうだなぁ……。だったらこの四年間遊びまくらないと」
「遊ぶのもいいけど、ちゃんと勉強もしなさいよ? そうじゃないとまともな職なんてないんだから。就活をなめると怖いわよぉ」
「分かってるって。ホントに綾姉は世話好きだねぇ」
 思わず苦笑しながらそう言うと、綾姉はちょっと怒った顔で
「今更なによ。昔からのことでしょ。それに、祐一のためじゃない」
「はは、ま、それもそうか。じゃ、そろそろ行くよ」
「うん。あ、ノブ君によろしくね」


少しばかり、台詞の間に地の文を入れ、また台詞も出来るだけ自然に近づけてみた。こうするだけでも、同じ内容の会話であるにもかかわらず、だいぶ印象が変わる。
地の文と、会話の間を意識することで、ここまで文章は変えることが出来るのだ。

では、次に作品の内容に触れてみたいと思う。主人公の相沢祐一はいつも自分に世話を焼く幼馴染みの藤木綾を疎ましく思っていた。それは思春期男子特有の、自分でやる!と言った精神だろうか。女の子に頼り続けることに気恥ずかしさを感じていた。
と、これは実によくある話である。その後、大学に合格し、一人暮らしを勝ち取った祐一。やっと綾姉と離れられる……。と、ここでやっぱし転がり込んでくる幼馴染み。ありきたり。
まだ第一話で、それと言った大きな動きもないのだが、ここまではどこにでもある話をなぞったような展開だ。
つまり、オリジナリティが足りない。自分が見て欲しいという場面がないのだ。
作品を書いている中で、筆者は必ず「ここを是非とも読んで欲しい!」という場面を入れる。私だって「この台詞を言わせたい!そして読んでもらいたい!」と考えて、わざわざそんなシチュエーションに無理矢理展開を変えたことがある。
何だけれど、今作品にはそのようなことが感じられる部分がなかった。
作品の冒頭というものは、読者の関心を惹くためにも出来るだけインパクトがあり、次回に興味がそそられるものでなくてはならない。しかし、どうにも読んだことがあるようなこの作品は、読者の関心を惹きつけることが出来ないように思われる。
ただ、同じようなネタでも、書き方によっては興味を惹きつけることが出来る。
例えば幼馴染みが転がり込んでくるシーンをちょっと変えてみる。主人公が部屋でのんびりしてたら急に引っ越し業者が荷物を運び入れてくる。突然のことに主人公が驚いていると、そこに綾姉が登場。そこで続きはまた次回。
こうしてみると、急に現れたあの女性は誰だ! ていうか、主人公はどうなるの? なんていう興味が湧いてくる。
ネタが既成作品と似通っていても、展開の違い、進み方の違いで全く別のように感じることが出来る。つまるところ、これは書き方の問題である。巧く書けるか書けないか。ただそれだけのことなのだ。
一話目のインパクトが物語のすべてを左右すると言っても過言ではない。如何に興味を惹きつけるか。それが重要だ。

大変偉そうなことをつらつらと述べてきた。でも、小説を上達させるためには、時には他人の厳しい意見が必要だと私は思う。是非とも、この書評を読んで、さらに創作意欲をあがていってほしい。
それと、余計なお世話かもしれないが、作品には題名をつけた方がいい。名は体を表すとも言うからだ。
また、最後に一言アドバイスしておくと、もっと本を読んだ方がいいと思う。多くの本を読むことによって、そこから技術を吸収していくのだ。ただ、一つ忠告しておくとラノベばかり読むことはオススメしない。出来るだけ幅広く、また過去の作品を読むことを推奨する。過去の作品からは、技術だけじゃなく様々な知識も得られるからだ。

さて、これにて今回は書評を閉じたいと思う。ジョー様の次回作に期待したい。

掲載サイト 白の刹那
掲載ページ ジョーの小説
作者 ジョー


posted by ヘボラマン at 21:50| Comment(1) | TrackBack(0) | 小説レビュー web小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年12月29日

web小説 Like or Love 盗鬼

さて、前回の書評からかなり間が空きましたが第4弾行きまーす。

今回は前回と同じ相互リンクサイトの水空の盗鬼様の作品Like or Loveを紹介します。

――あらすじ――
楓と郁は会うたび喧嘩する。
それは、他愛無い喧嘩である。楓は、彼のことが好きだ。けど、男としてじゃなく、友達としてだけど。
ある日、楓は郁に想いを伝えられる。自分は郁のことをどのように思っているのか。
LikeとLoxeの狭間で揺れ動く学園コメディ。


中編の本作品。なんていうかありふれた『幼馴染み』→『恋人』の過程を描いた作品である。
そのテーマを元にして、一貫した作品が書かれている点は評価すべきところだ。
では、これから細かいところをしっかりと検証していきたい。

まずこの作品。主に楓視点の一人称である。
描写が少なくスッキリとした文体である言えよう。また楓の内心はしっかりと描写され、LikeとLoveの間で揺れ動くところが実に巧みに書かれていると思われる。
また意外と起承転結がハッキリとしている。
最初の『起』は現状把握。郁と楓の関係や、周りの様子。そして二人が『親友』であるということの確認。
次の『承』は楓の気持ちの確認。そして郁に恋人ができたという噂。これによって楓の考える二人の関係の根底が揺らいでくる。この辺りから楓は郁との関係を何度も自らの中で確認している、これは今の関係が崩れるのを恐れ、また郁に恋人ができるということに何故だか危機感を感じているからだ。そのような揺れ動く楓の気持ちを彼女の行動で表せている点は感心する。
そして『転』。ここで楓は郁の気持ちを知ってしまう。郁との関係はあくまでも『親友』であり、その関係が『恋人』になるなんて微塵も思わず、また決して『認める』ことのなかった楓にとってはかなりショックな事件で、『承』で揺らいでいた二人の関係が完璧に消え去った瞬間でもある。
ここで楓は自分の想いについて見つめ直すが、五里霧中の状態で結論が出ない。そしてそこに郁の事故という『きっかけ』があって楓は自らの気持ちに気づくことになる。
まぁ、ここまで言ってしまうと『結』は二人は新たな関係として出発するということだ。『親友』という関係も残っているだろうが、主に『恋人』という肩書きで楓と郁という二人のキャラクターはこれからを過ごしていくだろう。

このように、今作品はしっかりと筋道を立て、物語の基本中の基本『起承転結』を守ってストーリーを進めている。これは基本ながらも難しく、こう形が整っている作品はそう多くはない。

では、この作品の問題点を羅列していきたい。
ハッキリ言うと物語以前の問題だが、少しばかり『小説』としては言い難い点がある。
まずは沈黙を表す『…』
この作品では『…』ではなく『・』を使っている。これはイタイ。小説では『…』が基本なので、これからは『…』を使ってほしい。最低限のマナーでもあるので。
また『!』や『?』の後には必ず半角あけなくてはならない。
例を挙げると
「いいかぁ!すぐに帰るんだぁ!」は×
「いいかぁ! すぐに帰るんだぁ!」は○
というわけだ。この点さえ守ればしっかりとした小説の形式となる。
小説を書いていくならば成長しなければならない。まぁ、私も昔は守っていなかったわけだが今ではしっかり守っている。これを期に直すと最高だろう。

さて、話が少し脱線してしまった。では作品に戻ろう。
この作品は少し煩わしいところがあった。
まずは楓の心情。郁との関係はあくまでも『親友』。郁のことは友達として『好き』。
ハッキリ言って、このことを何度も復唱しすぎた。あまりに繰り返しいうものだから読者は「だからもうそれは分かってるつーの!」とうんざりしてしまう。
そのことを強調すべき場面で強調すべきであり、無意味に連呼するのは逆に作品の出来を悪くしてしまう。
それに何故だかこの作品を読んでいて作品の世界に入れない。
それは(これは思いっ切り私の見解だが)主人公(楓)が一人でボケ、一人でつっこんでいるからであろうと私は考える。
つまり読者は何も考えなくてもキャラクターが勝手に明かしてしまう。それもすぐ後に。これでは読者はただ文字を見るだけになってしまう。これは激しくマイナスだ。
また文末表現が同じのを多用しすぎている。『〜った』や『〜た』。同じ文末を続けて何度も使ったり、短い間隔で使うとハッキリ言ってリズムが一緒でおもしろくない。
何も、答えられなかった。
郁のことは何でも知っていると・・・侮っていた。
生まれたときから同じ・・・とは言いがたいが、幼稚園に入る前から一緒にいる私たち。
私のお父さんと、郁のお父さんが親友で、
私のお母さんと、郁のお母さんが親友で。
だから、私たちは親友で。
だけど、お互いに恋愛感情と言うものは無かった。
むしろ、恋愛について話していたほどの仲だった。
あの出来事が起こるまでは。
中学1年生のある日、新斗君に告白された。
私は、そのとき彼が好きだった。
勿論、男としてじゃなく、友達として。
だから振った。
恋人同士になることを拒否した。
何故かは分からないが、それ以来互いの恋愛に関しては話さなくなった。
・・・そういえば昨日、何ヶ月ぶりか分からないが、私の家の前で郁に引き止められた。

この通り、文末が同じ文が目立つ。これは工夫さえすれば避けられることなので、今後から気をつけるべきであろう。

以上のことを踏まえて、この作品は形が整った作品ではあるが、細部にその形を乱してしまうところがあり実に惜しい作品であったといえる。
前作と比べるのは酷だが、今作は少々前作より劣っていただろう。
暇つぶし程度に読むのはいい。物語もいい。でも、細部をもっと整えれば、大変よい作品になるだろう。
では、この辺で今回の書評を締めくくりたいと思う。

掲載サイト  水空
掲載ページ  Like or Love
作者  盗鬼
posted by ヘボラマン at 18:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説レビュー web小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年11月07日

web小説 「Double Life」 盗鬼

書評第3弾も、web小説でいきまーす!

相互リンクサイト水空の盗鬼様の作品Double Lifeを紹介します。

――あらすじ――
無神経な親に騙されて女の子と同居することになってしまった主人公の香坂風紀。
その女の子というのは学校一可愛い、秋本明日香。
実は、風紀にはそのことを素直に喜べない、深い理由があった。
そんな彼らを中心に渦巻く、笑いあり、感動ありの学園ラブコメディ


この作品はすでに完結しており、全50話という構成になっている。
なかなかの力作。
設定としては、学園ラブコメディとも述べたが、同居ドタバタラブコメディとも言えるだろう。
まず、良いところをつらつらと述べていきたいと思う。

まず、伏線、過去、そして今。
この3つが上手くつながっている。
主人公、風紀は過去に辛い『過去』があり、その所為で女性恐怖症という『伏線』があり、明日香という女の子と同居する『今』がある。
一見して、バラバラの事柄だが、実際は深く関係している。
辛い過去があるからこそ風紀の伏線を張ることができ、そしてそれを踏まえて物語を盛り上げる為に女の子と(しかも美少女)との同居という設定が生まれる。
しかも、そのような設定は主人公、風紀のみに存在する物ではない。
ヒロインである明日香もまた、辛い過去を持っている。
ただ、普通に辛い過去ではない。
どこか、風紀と似たような過去を持つ。
また、その過去があったから、明日香は風紀と出会っているのだ。
過去はすべて、伏線と今とをつなげている。
そのことが一番わかりやすく、また間接的に暗示させている点は目を見張るところであろう。

また、物語の構成が実にシンプルだ。
だいたい、この物語は4分割されている。
まず、風紀と明日香の出会い。
そして、明日香の過去。
その次に、学園生活。映画研究部の映画撮影。
ラストに、風紀の過去と、二人の気持ち。
まぁ、このような感じになっていると思われる。
その4シーンすべてに、簡単な起伏があり、それでいて単体でも物語にしっかりとなる。この点もまた、なかなかの技量である。
出会いはなかなか衝撃的なものだ。
自分の家、新しく住む部屋。そこの同居人が同い年のかなりの美少女だとすれば誰でもぶったまげる。
もちろん、主人公である風紀だってぶったまげた。
高校1年生と、これまた微妙なお年頃であるが故に、さらに問題は深刻だ。
だけど、とりあえず2人はその現状を受け入れ、何とかしていこうとする。
その前向きな流れに、すんなりと読者は物語に入っていけると思う。

そして、明日香の過去。
このシーンはラストの風紀の過去のシーンの際に、とても重要なものになる。
もしここで、明日香の過去が明かされず、解決しないままだった場合は、ラストのシーンは面白味が半減する。
なぜなら、明日香は未だに過去を引きずっている。風紀と、元彼の大和を重ねてしまっているのだ。
そういう流れでいくのも悪くはないが、やはり明日香の過去のシーンは必要不可欠で、そのお陰でラストのシーンが際だっていると言えよう。

映画研究部のシーンは
さほど深い意味を持たないが、とりあえず脇を固める人物の確定、または新出という意味合いではなかなか重要度を増す。
なぜなら、他のシ−ンはメインの2人がほぼ重要であって、彼ら2人の問題に多くの脇役たちが登場するのは不可能だからだ。
しかし、脇役が出なければ50話もの長編を支えることは難しい。
なので、彼ら脇役をしっかりと確立させるシーンが必要となる。そのシーンがこの映画研究部の映画撮影のシーンだ。
また、このシ−ンは風紀と明日香の仲をさらに深めるシーンでもあるので、以外と重要度が高かったりする。

さて、ラストのシーンについてだが、このシーンは結構長く、太い。
まず、風紀の過去のキーマンである凛が登場する。
彼女の登場によって、風紀は明日香の存在を考えさせられる。
また、同様に明日香も彼女の登場で風紀に対する自分の想いに気づくのだ。
交錯する3人の想い。
これがまた、最後の一波乱をしっかりおこしてくれる。
学園祭というイベントも加味し、クライマックスは一気にヒートアップしてくるのだ。
最後、風紀が自分の想いに気づくが、そのきっかけを作ったのが3つ目のシーンで固まった脇役たちだ。
つまり、ラストのこのシーンはすべてのシーンをしっかりと加味し、それでいて盛り上がるシーンを作り上げているのだ。


さて、ここまで良いことのみを述べてきた。
実際、この作品は良い作品なのだが、完璧なわけではない。
これからは、少しばかり私が気になる点を述べていきたいと思う。
まず、風紀の女性恐怖症。
実際今作品でのコンセプトの一つであるこれが、全く持って機能していない。そう、機能していないのだ。
主人公は普通に明日香やその周りの女子たちと接しているし、これが問題となる大きなイベントがラストまでほとんど無い。
せっかくそのような設定をもうけているのだから、もっと活用すべきだ。
それに、ラストで無理矢理女性恐怖症を持ってきている点も苦しかった。
そうしてしまうことによって、最後の締まりが悪くなっていると思う。
最後の風紀の告白のシーンでも、女性恐怖症のことは言わない方が良かったと私は思う。
女性恐怖症という設定を使うのなら、作品を通してしっかりとそのことをアピールする必要があった。

そして、もう一つ。それが凛と風紀の関係だ。
先ほど、凛の登場によって風紀と明日香が自分の気持ちに気づいていくと述べた。実際、凛の存在は重要だ。
しかし、凛と風紀の関係は少しばかりおかしかった。
風紀は凛のことでいろいろと心の傷を負った。それは女性恐怖症というもので表れている。
転校してきて最初の内の関係は実に良かった。
風紀は凛をしっかりと拒絶していたのだから。
しかし、段々と風紀と凛の関係は普通の男女の関係。否、凛が風紀を追いかけ、風紀はそれほど拒絶、拒否しない関係となってしまった。
こうなってしまうと、風紀の心の傷はこうも簡単なものだったのかと疑ってしまう。こうも簡単に許し、普通に接することができるのかと。
まぁ、クラスメートになってしまった以上、それほど邪険に扱えないだろうが、それにしても風紀は凛に対して無防備であり、明日香との対応とそれほど変わらなかった点はマズかった。


こう、長々と述べてきが、この作品はそこそこの作品と評する。
少々酷な評かもしれないが、暇つぶしで読むのには最適で、純粋に文学を楽しむには物足りない作品だ。
だが、ノリもテンポも悪くなく、面白いことには変わりない。
軽い気持ちで、読んでみてはどうだろうか。私としては、そのような手軽さがある作品だと思う。
さらに推敲し、文を磨けば良くなるが、これはこれで荒削りなところが良い。
荒削りなところがまた魅力ということで、今回の書評は締めくくりたいと思う。

掲載サイト  水空
掲載ページ  Double Life
作者  盗鬼
posted by ヘボラマン at 22:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説レビュー web小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月30日

web小説 「CAMPUS LIFE」 椿瀬誠

書評2発目はweb小説です。
CL1.jpg
私の師匠にあたる椿瀬誠様の作品「CAMPUS LIFE」を紹介します!
現在、この作品の続編が椿瀬様のサイトAnother Landにて好評連載中です。
―――あらすじ―――
運命の出会いを求め、地方の大学に進学した、主人公・真部祐紀。
ボランティアサークルで、出会った「鎌井直」と、いいカンジ。
なんだけど……祐紀には、誰にも言ってないヒミツがあった。


この作品、設定が実に面白い。
かなりのネタバレになるが、コンセプトは逆転カップルラブコメディー。
つまり、オカマとオナベのカップルである。
今作での主人公は辛い過去があり、地元から逃げてきた一人暮らしの大学生の真部祐紀。
実際、今作では明かされないがとんでもない過去を持っているオナベだ。
その辺は続編「CAMPUS LIFE R」を読んで頂きたい。
web小説でも舞台にされることがあまり無い大学という世界。
高校での学園生活というものが主流の現在のweb小説ラブコメとはひと味違う味が出ている。
地元を飛び出し、いざキャンパスライフを満喫するぜ!と意気込む主人公。
心の優しい女の子が一杯いると思って入ったサークルはなんとマッチョ2人しかいないむさ苦しいサークルだった。
そこで登場のヒロイン兼オカマ、鎌井直、本名鎌井直紀。
その子の登場で主人公はそのサークルにとどまることを決める。
そして、その子に様々な方法でアプローチをかけていくのだ。

この作品で目を見張るところと言えば、キャラクターの個性である。
実際、メインとしてはわずか4人しか出てきていないが、それぞれが強烈に濃い。めちゃくちゃ濃い。
メインカップルの二人がオカマにオナベっていうのもかなり衝撃的だが、ボランティアサークルの会長、副会長のマッチョコンビもかなり濃い。

「姫、ヅラってどういうことさ?」
「ごめんなさい……実は私、男なんです。名前も本当は、鎌井直紀です。……すみません……」
あぁ、冗談じゃなかったんだね……。少し気が遠くなってきた。
親に勘当されたのも、これが理由なのかな?
「アツシィィィィィ」
「ツヨシィィィィィ」
細木さんと剛田さんが、抱き合ってテイクオフ――現実逃避してしまった。


思わず吹き出した
この二人の行動は実に面白い。
脇役に徹しながらも、存在感を存分にアピールしており、物語のテンションを高める重要な位置にあったかと思われる。
個性豊かなキャラクター達がこの物語をしっかりと牽引していっているのは間違いない。
しかし、濃いキャラクターばかりで脇役でもいいから普通のキャラクターが出てきてほしかった。
平凡なキャラクターが出てくれば、周りの個性豊かなキャラクターがさらに引き立てられ、それに彼らの行動にツッコミなどを入れられたのではないだろうか?
個性豊かなキャラクター達をさらに際だたせる為の工夫が少しほしかったのが本音であるが、所詮工夫である。そんなキャラがいなくてもメインのキャラ達はかなり目立っていると言えるだろう。

最後に、話の構成について述べたいと思う。
この話は春から始まり、秋で終わった。
その約半年の間を8話、いやプロローグ、エピローグを除くと6話の中にまとめ上げた技術は素晴らしいと思う。
実際、それだけの期間を書くとなると10話、20話いってしまう場合もある。
しかも、恋愛が成就するまでの流れである。
何故、6話で丸く収められたかというと、起承転結がハッキリしているからだ。
最近の長編、または恋愛小説は起承転結が起承承転転結転結って感じになっていると思う。
出会い、恋に落ちる。でも、その恋を成就させるには壁を乗り越えなくてはならない。そして、何とか乗り越えるも、またも新たな壁が立ちはだかる。
つまり、アッサリとゴールインさせないのだ。
こう、一つの壁を乗り越えゴールしたこの作品はかなりスマートな作品だ。
しかし、短い分欠落した部分も多く、やはり6話分で約半年分は苦しかったかもしれないと思われる。
自分としては、最終話にあたるエピローグはいらなかったのではないかと思う。まぁ、続編を書いているので今では必要不可欠な話だが。
後日談というものはあまり書かない方がいいと私は考える。
苦難を乗り越えたそのあとは、読者の想像にお任せする。読み終わったあとも、読者はその後どうなったかを自分で想像することによって物語の余韻につかることができるのだ。
それに、いらぬ伏線を張っている点も少し気になる。
続編で明かされているとはいえ、真部祐紀の伏線はここでは必要なかったのではないだろうか?
続編の最初で伏線を張っていても十分間に合ったと私は考える。

書評のまとめとしては、かなりスマートで強烈な作品であったといえる。
その分、少し長さが苦しかったかもしれないし、意味のない伏線があった。
物語としてはかなり面白く、個性的キャラにかなり笑わされる物語だ。
台詞のところを太字にしてあるので読みやすい点も良い。
なかなかオススメな作品であると評し、書評を締めくくりたいと思う。

掲載サイト  Another Land
掲載ページ  CAMPUS LIFE
作者  椿瀬誠

posted by ヘボラマン at 20:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説レビュー web小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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